化学系知財部の進境

化学メーカーに就職したアラサー理系男子の成長記録。資格・研究・知財等の話を発信していきます。

【知的財産】共同出願の考え方と注意事項

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 皆さんこんにちは!
 
今回は、知財部の実務者がよく問い合わせを受ける他社との共願について、具体例を交えて解説していきたいと思います。
 
まず、共願とは、「複数の出願人で一つの特許を出願すること」を言います。 
(特許権が共有に係る、とも表現します。)
 
こういった場合、権利の行使や処分の際に、他の出願人との関係でさまざまな制約が生じるため、注意が必要です。
特許出願だからと言って、何でもかんでも共願にしていいわけではありません
共願におけるメリット・デメリットをしっかりと把握したうえで、最良の選択をする必要があります。
 
 
 

共同出願における留意事項

 そもそも、どういった時に共同出願を検討するかというと、「特許を出願する際、自社の知見だけでなく、他社の情報(用途、評価結果等)を特許に記載するのであれば、共同出願となる」と認識して下さい。

他者の情報を記載する際、必ず共願になります。

他者の知見を勝手に自社の単願特許に用いると、その特許に無効理由が内在することになりますので注意が必要です。


それでは、共同出願のよくあるパターンについて、具体例を交えながら解説していきたいと思います。

 

例えば、
A社:材料メーカー (仮にインキメーカーとする)
B社:材料組み立て・販売メーカー (仮にボールペンメーカーとする)

とします。

 

一般的なケース

まず、一般論として、A社とB社が共同出願した場合、

A社 ⇒ 権利を実施可能

     但し、第3者にライセンスする場合はB社の許可が必要

B社 ⇒ 権利を実施可能、

     但し、第3者にライセンスする場合はA社の許可が必要

となります。

 

よくあるケース

 ■A社がB社にインキCを販売し、B社がA社製インキCを搭載したボールペンDを販売し、それについて共同出願を行った場合

出願特許の特許請求の範囲:インキCを含むボールペン

A社 ⇒ 権利を実施しない

     (ボールペンメーカーではないため実施できない)

     第3者にライセンスしたい場合、B社の同意が必要

B社 ⇒ 勿論実施可能

     独占したいので、第3者にライセンスはしない

     インキCの調達は、他社からも可能!!

本特許のせいで他のボールペン会社がインキCを搭載ボールペンを作れないので、A社としてはインキCをB社に売るしかなくなります。

 ⇒つまり、A社としては共同出願することで販売に制限がかかるため、A社はそれを理解したうえで共同出願しなければなりません。

 ※B社が業界最大手とかだったら問題ありませんが。。。

 

B社が一般的な会社である場合は、A社は単に共願するだけではなく、B社に対して共願+αの対応をとる必要があります。

 

A社のとる対応例

①契約による対応    

・第三者へライセンス可能にしてもらう

 ⇒その代わりに、B社に対し独占期間を設ける、

  もしくは価格メリットを付与する等、B社への優遇措置を行う

・原則、A社からインキCを買って貰うようにする

②特許権利範囲による対応

権利範囲を意図的に狭くする

 ⇒A社がインキCを少しマイナーチェンジするだけで他社に売れるようになる

・止言葉を「〜インキ」としたインキC自体の請求項を加える

 ⇒A社がインキCを第三者に売ることはできないが、

  B社が第三者からインキCを購入されることは防げる

 

以上が、基本的なA社(材料メーカー)の考え方です。

 

勿論、共同出願によるA社のメリットも少なからずありますので、次はそれについて考えていきましょう!


B社がボールペン分野において大きなシェアを有している場合

A社メリット
・共同開発により、技術が進捗する

 (最先端の情報が得られる)

・B社に売るだけでも利益が出る

A社デメリット

・インキCを他社から入手される可能性がある

・第三者へのライセンスに制約が生じる

B社メリット

・インキCを用いた製品を独占販売可能


■逆にB社の規模が小さい場合
A社メリット

・共同開発により、技術が進捗する

A社デメリット

・利益が少ない

・インキC等を他社から入手される可能性がある

・第三者へのライセンスに制約が生じる

B社メリット

・インキCを用いた製品を独占販売可

 

当たり前の話ですが、材料メーカーにとって、共願するなら大手ってことですね!

※ここで注意事項ですが、もしA社の関連会社がボールペンを販売している場合は、契約で関連会社の実施を認めてもらったうえで、権利範囲を広く取る必要があります。

 

 このように、結構共同出願のメリットや注意事項などはケースバイケースであり、その時々で可能性を考えていく必要があります。

 

 

大学との共願

 ■A社がE大学と共同出願する場合

A社  ⇒ 権利を実施できる

      但し、第三者へライセンスする際にE大学の同意が必要

E大学 ⇒ 実施しない(できない)

      但し、第三者へのライセンスする際にA社の同意が必要

 

しかし、これでは大学側に旨味が全くないため、多くの場合、A社が大学に不実施補償を支払います。

これは、要するに「権利を使わないのだからお金ちょーだい」というやつです。

こういったお金がもらえないと、大学側は共同出願する意味がありませんからね!


但し、根本的な考え方として、大学などの公的機関は、世の発展のため、そして自分たちの成果を大々的に公表したいがために第三者に実施許諾したいのが普通です。

なので、特許というかたちよりも学会発表の形式を好みます。

そちらの方が成果が判り易いですから。


A社としては、E大学が共願における自分たちの権利を他社に譲渡しないように、A社に専用実施権を設定してもらう、もしくは権利を譲り受けるのがベターです。

A社としては独占販売したいわけですからね!!

 

そこらへんは駆け引きとなります。

 

 

まとめ

 A社(材料メーカー)

・B社の規模によるが、共同出願のメリットは少ない

・共同出願するのなら、契約によって条件を追加する事が必須

・可能であれば、共同出願前に自社単願の出願(インキC関連)を検討する

B社(材料組み立て・販売メーカー)

・A社の規模に関わらず、共同出願を推進していくべき

 

となります。

つまり、自分の会社がどの立場かによって、共同出願に関する考え方・対応が全く異なるわけです。

実際に共同出願する場面に遭遇した際は知的財産部とよく相談し、あらゆるリスクを考慮して対処しましょう!

 

考え方の参考にしていただければ幸いです!

(上記記載事項はあくまで一例で、「こういった考え方がある」といったレベルに過ぎません。全てのケースがこの考え方でいけるわけではないので、注意して下さい!)

 

共同出願時にほとんど必須となる「契約」について、記事を書いています。

併せて確認してみて下さい。↓↓↓↓

 

www.chemical-ipd.com

 

 

それでは、最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

また宜しくお願いします。

 

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